春のトロントで感動した メープルシロップフェスと森の時間

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春のトロント旅行で、子どもと一緒にどこへ行くか迷う方も多いと思います。定番の観光地ももちろん楽しいのですが、せっかくこの時期に来るなら、春の短い間だけ体験できるカナダらしい時間を入れると、旅の印象がぐっと深くなります。

今回行ってきたメープルシロップフェスティバルは、まさにそのタイプのおでかけでした。森の中を歩きながら、木の種類を見て、昔の道具を見て、樹液がどうやって集められるのかを知って、最後に甘いメープルの味を楽しむ。子どもには遠足みたいで楽しく、大人にはカナダの暮らしや歴史が見えてくる時間でした。

しかも実際に行ってみると、メープルシロップはただの甘いお土産ではないことがよくわかります。長い冬を越えた木の中で、少しずつ蓄えられたものを、春のほんの短い時期にだけいただく。その背景を知ると、いつも見ていた小さな瓶の重みが変わって見えました。

森の中を歩いて、最初に気になったのはメープルの木の違いでした

会場に入って最初に足が止まったのが、メープルの種類を紹介する看板でした。そこにはシュガーメープル、レッドメープル、ブラックメープル、シルバーメープルの4種類が並んでいて、葉の形の違いを見比べられるようになっていました。

メープルなら全部同じように見えてしまいそうですが、こうして並ぶと意外と違います。しかも、シロップ作りの世界ではどの木でも同じというわけではなく、一般にシュガーメープルは糖度が高く、ブラックメープルもよく使われる木です。レッドメープルも採取に使われますが、効率の面ではシュガーメープルが強いとされています。つまり、同じ1リットルのシロップにたどり着くまでの道のりが、木によって少しずつ違うということです。

実際に森を歩いていると、ただの木の集まりではなく、どの木から樹液をもらうのかを見極めてきた積み重ねがあるのだと感じます。観光として歩いているだけでも楽しいのに、こういう背景が入ると、子どもにとっても自然観察の時間になります。

今年の味は、今年の春だけでは決まらない

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去年は暑かったけど味はどうなのかな?

現地で聞いて印象に残ったのが、前年の降雪や土の水分、そして前年の日照の影響を受けて、葉っぱがどれだけ光合成できたかが、今年の樹液の状態にもつながっていくそうです。

この話は感覚的にもすごく納得でした。春に突然、木の中から甘いものが湧いてくるわけではなく、前年の夏から秋にかけて木が光を受け、水を吸い、少しずつ糖を蓄えてきた結果が、春の樹液になる。樹液の糖は前の生育期の光合成で作られ、木の中に蓄えられたものがもとになると説明してくれました。気温や土壌水分の変化は糖度や収量にも影響し、研究では前年5月から10月の平均気温上昇が sap sugar content の低下と関連することも報告されています。

だからこそ、その年の1本のシロップの中には、春だけではなく、前年から続く木の時間が入っているんだなと思いました。

ゴールデン、アンバー、ダーク、ベリーダークで味わいも変わる

会場の室内には、メープルシロップの色の違いを並べた展示もありました。上から順にゴールデン、アンバー、ダーク、ベリーダーク。見た目だけでもかなり違っていて、同じメープルシロップでもこんなに幅があるんだと驚きます。

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私はゴールデンが好き。ベリーダークは黒蜜みたい。あんみつにぴったり?

カナダの基準でも、メープルシロップのカラークラスはこの4種類に分かれていて、ゴールデンは繊細、アンバーはしっかりした甘み、ダークはより力強く、ベリーダークはかなり濃い風味と整理されています。お土産で選ぶときも、ただ色が濃い薄いではなく、どんな食べ方に向いているかで選べるのが面白いところです。パンケーキにかけるならアンバー、料理に使うならダーク系が好きという人もいると思います。

こういう展示は、大人には味の違いの発見になりますし、子どもには色の違いだけでも楽しい学びになります。

たった1リットルができるまでの手間を知ると、見方が変わる

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深く穴をあければたくさん獲れるわけではない!

今回いちばん伝えたいのは、メープルシロップは思っている以上に手間も時間もかかるということです。

会場では、木の断面図を使って、どこに穴を開けるのかを説明していました。大事なのは Sapwood で、ここは木の中で水を運ぶ通り道です。一方で Heartwood は中心に近い、木を支える部分。UVMの資料でも、sapwood は水を葉へ運ぶ新しい木部で、heartwood は中心にある暗い木部で、支えの役割を持つと説明されています。だから樹液を取るときは、この sapwood を狙って穴を開け、heartwood をむやみに傷つけないことがとても大切になります。

そして、集めた樹液がそのままシロップになるわけではありません。メープルシロップは一般に40対1くらいが目安で、約40リットルの樹液からやっと1リットルのシロップになります。つまり、透明でほとんど水のように見える樹液を、気の遠くなる量だけ集めて、煮詰めて、ようやく小さなボトルになるわけです。

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サトウキビが育たない環境のカナダにとってメープルはとても貴重でした

現地では、目安として40年くらい育った木ならバケツ1つ、80年くらいなら2つという説明もありました。もちろん木の太さや状態で変わるそうですが、それでも長い年月をかけて育った木から、春の短い間に少しだけ分けてもらっているという感覚は強く残りました。

こういう話を聞いたあとだと、スーパーで並んでいる1本も、急に安くは見えなくなります。むしろ、よくこの値段で買えるなんてありがたいと思うようになりました。

昔の道具を見ると、家族総出の仕事だったことがよくわかる

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ドリルを使って穴をあける体験もしてきました!

展示には、昔使われていたドリルや蛇口のような道具、木のスパイル、今のチューブ式の集水方法なども並んでいました。緑のチューブが森の中をずっと伸びている風景も見られて、昔と今の違いがひと目でわかります。

その中でも印象に残ったのが、hogshead の説明でした。バケツや pail で集めた樹液を、さらに大きな樽に移して、馬ぞりで sugar bush の中を運んでいたそうです。現地の看板を見ると、昔のメープル作りが本当に運搬との戦いだったことが伝わってきます。小さなバケツ1つでも水のような樹液は重いので、それを森の中で何度も集めていたと思うと、気軽な甘味というより、かなりの重労働です。

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寒い中家族総出で収穫する大仕事

もうひとつ、子どもにもわかりやすかったのが shoulder yoke の展示でした。肩にかけて両側にバケツを下げる、いわば昔の天秤棒のような道具です。説明では、家族みんながメープル作りに関わっていたこと、そして子どもたちも運搬を手伝っていたことが紹介されていました。こういう道具を見ると、メープルシロップ作りが一部の職人だけの仕事ではなく、家族の季節仕事だったことがよくわかります。

子どもにとっても、ちゃんと楽しいのがこのフェスのいいところ

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くるっと1周まわるだけだけど、森の中が気持ち良い

歴史や道具の話だけだと、大人向けに聞こえるかもしれません。でも実際には、子どもが楽しめる要素もちゃんとありました。

まず、馬車に乗れるのがわかりやすく楽しいです。森の中をゆっくり進むだけでも、普段の観光とは全然違う時間になります。歩くのに疲れたタイミングにも入れやすいので、子連れだとかなり助かります。

それに、看板や展示がただ難しい説明だけではなく、道具を見て、木を見て、運ぶ様子を想像できる作りになっていました。肩にかつぐ shoulder yoke や大きな hogshead は、子どもにとっても記憶に残りやすいと思います。甘いものを食べる前に、どうやってここまで来たのかを少しでも知ると、体験に厚みが出ます。

観光地をいくつも詰め込む旅も楽しいですが、こういう場所は、ひとつのテーマを親子で共有しやすいのがいいところです。帰ったあとに、あの木の中のどこに穴を開けるんだっけ、あの大きな樽の名前なんだっけ、と話題が続くタイプのおでかけでした。

ただ甘いだけではなく、カナダの春そのものを味わう時間でした

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左の大きな鉄鍋から何時間もかけて右側のちいさな鍋に煮詰めていく

今回のメープルシロップフェスティバルは、子連れ観光として楽しいだけでなく、カナダらしい自然、暮らし、歴史の入り口になる体験でした。

森の中にまだ雪が残っていて、足元は春と冬の間のような感じ。その中で木に穴を開け、樹液を集め、煮詰めて、やっとシロップになる。しかもその味は、去年の光や水分の積み重ねの先にある。そう思うと、メープルシロップはただのお土産というより、自然と人の手間が重なってできた春の恵みなんだと感じます。

特にトロントに子連れで来る方には、ただ写真を撮って終わる観光より、こういう体験型の場所をひとつ入れるのがおすすめです。カナダを代表する味を、食べるだけでなく、少し知って帰れる。その違いは案外大きいと思います。

まとめ

メープルシロップフェスティバルは、春のトロント近郊で体験できる、子連れ旅行と相性のいいおでかけ先でした。馬車に乗って、森を歩いて、道具を見て、木の仕組みを知って、最後に甘い味を楽しむ。子どもには遠足のように楽しく、大人にはカナダの背景が見えてくる時間です。

そして何より、たった1本のメープルシロップがどれだけ時間と自然の積み重ねでできているのかを知ると、その価値の感じ方が変わります。春の短い時期にトロントへ来る方には、かなり記憶に残りやすい体験になると思います。

TorontoKIKIでは、こうした観光地の表面だけではなく、その土地らしさや背景も含めてご案内しています。子連れで無理のない動線を組みたい方や、ただ回るだけで終わらない旅にしたい方には、こういう春のおでかけも相性がいいと思います。