
ナイアガラ・オン・ザ・レイクやナイアガラの滝へ向かうとき、QEWの高速から大きな煙突や、オレンジ色の炎、そして大きな船が見えて気になったことがある方も多いと思います。私も最初は、あれは何の工場なのか、船はどこへ向かっているのか、正直よくわかっていませんでした。
でも、ここをただの工業地帯として見るのではなく、五大湖の水の流れと物流の大きなつながりで見ると、景色の見え方がかなり変わります。この記事では、QEWから見えるハミルトン周辺の風景を入り口に、エリー湖からオンタリオ湖、さらにケベック側と大西洋へ続く水の道を、地理が苦手な方にも追いやすい形でまとめます。
目次
QEWから見えているのは何なのか

厳密には、オンタリオ湖そのものではなくハミルトン・ハーバー
先に結論から言うと、QEWから見えている水面は、オンタリオ湖の真ん中というより、オンタリオ湖西端にあるハミルトン・ハーバー周辺です。ここはバーリントン運河でオンタリオ湖本体につながっていて、昔から船の出入りを支えてきた場所です。カナダ政府も、バーリントン運河はハミルトン・ハーバーの工業地域を国際的な交易と結ぶ重要な水路だと説明しています。
このあたりは、旅行者が何気なく通り過ぎがちな場所ですが、実際にはオンタリオ州でも重要な港湾エリアのひとつです。ハミルトン港はオンタリオ州最大の港で、鉄鋼、農業、建設、エネルギーに関わる貨物が集まる拠点になっています。
煙や炎は、製鉄所や港湾設備の景色として見えていることが多い

QEWから見える煙や炎は、野焼きのようなものではなく、工業設備の一部として見えている場合が多いです。特にハミルトンの製鉄所では、コークス炉ガスをフレアとして燃焼させることがあり、会社自身も、設備保守時などに濃いオレンジ色の炎が地域から見えることがあると案内しています。フレアは安全管理や環境管理の一環として行われるものです。
ナイアガラへ向かう途中に見えるあの独特の景色は、少し無機質にも見えますが、実は南オンタリオの産業と物流を支えてきた風景でもあります。旅行の道中で通り過ぎるだけでも、背景を知っていると印象がかなり変わります。
あの水はどこから来て、どこへ流れていくのか

五大湖の水は、ナイアガラの滝を経てオンタリオ湖へ向かう
地理の授業で習った記憶がある方もいると思いますが、五大湖の水は大きくつながっています。五大湖の水はスペリオル湖とミシガン湖からヒューロン湖へ集まり、そこからセントクレア湖を通ってエリー湖へ、さらにナイアガラの滝を経てオンタリオ湖へ流れ、最後はセントローレンス川から海へ向かうとされています。エリー湖とヒューロン湖は川があるので水がナイアガラの滝まで流れ、ナイアガラの滝で落ちてオンタリオ湖に入り、そこからさらに東へ向かっていきます。
下流はエリー湖ではなく、ケベック側と大西洋の方向

ここで少しややこしいのが、下流はどっちかという感覚です。見た目だけだと、トロントからナイアガラ方面へ向かうので、何となくそちらが先に見えますが、水の流れとしては逆です。ナイアガラ川はエリー湖からオンタリオ湖へ北向きに流れ、その先はセントローレンス川を通って東へ抜けていきます。
なので、ハミルトンやトロント側から見た下流は、エリー湖ではなく、キングストン、モントリオール、ケベック、そしてさらに先の大西洋側です。タドゥサック周辺も、サグネ川とセントローレンス河口域が合流する場所として案内されています。水の流れをかなり大きく見ると、オンタリオ湖の水はこうした河口域を経て大西洋につながっていきます。
反対に、ハミルトンからエリー湖側へ船で向かうときは、ナイアガラの滝をそのまま下れないので、ウェランド運河を通ります。公式資料でも、ウェランド運河はオンタリオ湖とエリー湖を結び、ナイアガラの滝を迂回するための重要な航路だとされています。
いまでも五大湖は貨物船が行き来する水の道
QEWから見える大きな船は、タンカーではなく貨物船のことも多い

QEWから大きな船を見ると、何となく石油タンカーのように見えることがあります。でも、五大湖では今でも bulk carrier と呼ばれる、ばら積み貨物船が活発に動いています。
つまり、見た目が大きくて重厚でも、実際には石や塩、鉄鋼原料、穀物などを運ぶ貨物船であることが少なくありません。地理の授業で習った五大湖のつながりは、昔の話ではなく、今も物流の現場としてちゃんと生きているんだなと感じる部分です。
ハミルトン港では、何が運ばれているのか

ハミルトン港の公式案内を見ると、この港がかなりはっきりした役割を持っていることがわかります。鉄鋼向けの原料として iron ore や coal、農産物として corn、wheat、soybeans、そして液体貨物として gasoline や asphalt などが扱われています。液体貨物のページでは、petroleum products、biofuels、chemicals なども挙げられています。
なので、QEWから見える船は、ハミルトンの製鉄所や港のターミナルに入っていく船かもしれませんし、逆にここから別の五大湖港や、セントローレンス川の下流側へ向かう船かもしれません。ハミルトンからケベック方面へ液体貨物が運ばれること自体は、水路のつながりとして十分ありえますし、一方でアメリカ側から入ってきた貨物がここで降ろされて、そこから鉄道やトラックで南オンタリオへ運ばれる流れもあります。
この景色を知っていると、ナイアガラ道中が少し面白くなる
ナイアガラへ向かう道は、滝そのものが目的地になりがちです。でも実際に走ってみると、その途中にはハミルトン港の工業地帯があり、五大湖の水の流れと物流が重なる景色が広がっています。
煙突の煙や炎を見ると少し驚くかもしれませんし、大きな船を見ると、どこから来てどこへ行くのだろうと気になるはずです。そんなときに、ここはエリー湖からオンタリオ湖、さらにセントローレンス川と大西洋へ続く大きな水の道の途中なんだ、と思い出すとただの通過点ではなくなります。
まとめ
ナイアガラ・オン・ザ・レイクやナイアガラの滝へ向かう途中に見えるハミルトン周辺の景色は、少し無骨で、観光地らしい華やかさとは違います。でも、その背景には、五大湖の水がつながる地理の面白さと、今も動き続ける北米の物流があります。
旅行者だけでなく、トロント在住者にも、このルートを何度も通るうちに気になってくる景色だと思います。次にQEWを走るときは、あの煙や船の向こうに、エリー湖、オンタリオ湖、ケベック、そして大西洋まで続く一本の流れを思い浮かべてみると、道中が少し違って見えるはずです。
お子様と一緒のトロント旅行であればぜひ必見です。
教科書の中に出てくる5大湖を生で見ることによって、まるで海のように大きな湖は大人だけでなく子供の記憶にも深く残ると思います。
