17週の雨を越えて生まれたワイン|ナイアガラの一本に込められた物語

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雨が17週続いた年に生まれたワイン
余ったラズベリー3トンから生まれた、SouthbrookFramboise。
誕生秘話と国際コンペ受賞、飲み方までワイン好き向けに紹介。

ラズベリー畑が、ワインになった日

ワインの誕生って、だいたいロマンで語られがちだけど、Southbrookのフランボワーズ(Framboise)はまず現実から始まります。

1992年の夏、雨がほぼ毎週末降り続けて、ピック・ユア・オウン(摘み取り体験)のラズベリー畑にお客さんが来ない結果、収穫量が3トン超(別の記録では3.5トン)という「ジャムでは処理しきれない量」が畑に残ってしまいました。

普通なら泣く。もしくは赤字?破産?だけど、Southbrookは違った。
「ポートみたいな酒精強化ワインを、ぶどうじゃなくラズベリーで作ってみよう!」
この発想で、何度か試して完成したのが、いまのFramboise。

つまりこれ、
天気が悪すぎて生まれた、奇跡のデザートワインなんです。

私のブログをお読みの方は、もううすうす気づいていらっしゃるとは思いっますが、ただの成功物語でなく、絶体絶命のピンチからチャンスに変えていったワイナリーやお店を紹介することがとても多いです。このワイナリーもその一つです。

Southbrookというワイナリーについて

Southbrookはナイアガラ・オン・ザ・レイクに拠点を置く、オーガニック/ビオダイナミック/再生型(regenerative)に本気の造り手。カナダで先駆けとして認証を積み重ねてきたワイナリーとして紹介されています。
しかもホスピタリティ棟がLEED Gold(2008年)という、環境設計までガチです。

面白いのは、フランボワーズがイレギュラーなフルーツワインに見えて、実はSouthbrookの哲学(土地・農・サステナブル)がそのまま出ているところ。公式にも「フルーツワインはオンタリオ産フルーツで作っている」と明記されています。

フランボワーズ=甘いで終わらない

Framboiseの魅力は、甘いのにだらしなくないところ。
公式の歴史ページでも「just-picked(摘みたて)みたいな濃い果実味」が国内外でヒットし、主要な受賞につながった、と語られています。

甘さって、ワイン好きほど警戒しがちじゃないですか。
試飲の際も、甘いのはダメ。わかります。
口の中がまとわりつくような感覚が引っかかるのは嫌ですよね。
でもこれは「甘い=デザート」じゃなくて、「甘さ=果実の密度」みたいな方向。冷やして飲むと、ラズベリーの赤い香りがスッと立って、余韻がちゃんとワインとして着地します。ジュースのような感じではありません。

コンペで勝ったフランボワーズ

ここから急に話がデカくなります。
Framboiseは「オンタリオのワインとして初めてイギリス最大級の老舗高級デパートのHarrodsで売られた」と、当時のストーリーとして語られています。
さらにコンペ実績が強烈で、ニュージーランドの国際フルーツワインコンペで750本中、1位と3位という事件。ほかにも国際的なワインコンペで金賞クラスの評価が並び、Decanter誌の特集でも(90年代後半)カナダ枠で唯一の選出になった、という記述まで出てきます。

甘口を「逃げ」じゃなく「武器」にして、世界で勝ってる。
このコンペで優勝したことを知らずに飲んだ私は、やっぱりね〜!他と全然違う!ってわかった私にちょっぴり優越感じちゃいました。

おすすめのペアリング&飲み方

SouthbrookのFramboiseにはロイヤルティ・ラズベリーのみで作られているため、美しいルビー色にフレッシュなラズベリーの香りに程よいミディアムボディ。後味は甘口で、ほのかな酸味があり、フルーティーな余韻が長く続きます。
そのため、チョコレートデザートと相性抜群の、数少ないワインの一つです。夏のカクテルの味を引き立てるだけでなく、シャンパンと合わせて定番の「キール・ロワイヤル」を作​​るのもおすすめです。」
つまり、結論はこう。

・真面目にいくなら:しっかり冷やして、チョコレートデザートと
・パーティーでは:スパークリングで割って、香りを立ち上げる(キール・ロワイヤル)にして庭でお友達とおしゃべりしながら飲む!

ワイン好きの休日に必要なのって、こういう「甘さの正しい使い方」なんですよね。甘口を最後の一杯に置いた瞬間、食事の時間の良し悪しが決まると思います。

世界中を旅してメダルを集めてきたフランボワーズ

雨が続いて、ラズベリーが余って、ポート風に仕立ててみた。
その偶然が、Harrodsに行って、コンペで勝って世界中を旅してメダルを集めてきたフランボワーズが今も語り継がれている。

ワインって、結局「土地×人×たまたま」の芸術だと思うんです。
Framboiseはその全部が濃い。だから刺さる。ワイン好きほど刺さる。

ナイアガラでワイン巡りをするなら、こういうストーリーのある一本を、現地の空気ごと飲みに行くのが正解。Southbrookのようにオーガニック/ビオダイナミックの思想があるワイナリーは、行く前と行った後で「ワインの見え方」が変わります。

TorontoKiKiのツアーでは、ただ試飲して終わりじゃなく、「この土地で、なぜこの味になるのか」まで含めて、気持ちよく回れるルートを組みます。Framboiseみたいな語れる一本を、あなたの旅のハイライトにしませんか。